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F-0038 焼き増しが一枚多く仕上がった日の写真店の日誌

時期
1996 年から 1999 年頃
状態
完全
出所
写真店のレジ横に置かれていたとされる大学ノートの日誌から、関係する日の記載を抜いて写したものとされる。売上や仕入れの数字は写しの際に省かれている。

// 本文

(店のノートの写しとされる。日付の間は写しの際に飛ばされている)

六月十八日 雨

北原さんの焼き増し、十二枚の注文で十三枚上がる。数え違いかと思ったがネガを見ると最後の一枚に駒がない。茶の間の写真。誰も写っていない。取次の混入だろうと袋を分けておいたが、取りに来た北原さんは、これはうちの茶の間だと言う。座布団の柄で分かると。撮った覚えは家の誰にもないそうだ。気味が悪いから要らないと言うので引き取って、レジの下の抽斗に入れておいた。取次に電話。心当たりなしとのこと。

七月二日 晴

北原さんの一枚、また見てしまった。茶の間。ちゃぶ台に湯呑がふたつ。人がいない。おかしいのは高さで、鴨居のあたりから見下ろしている。カメラを構えてもああはならない。脚立でも立てんことには。

十月二十六日 曇

二件目。飯田さんの台所。飯田さんは笑って、心霊写真かね、なんか出てるかね、と言った。何も出ていない。ただの流しと勝手口だ。幽霊なら、まだ話が分かる。何も出ていないのが、かえっていけない。今度は押し入れの中の高さだと思う。夜、店を閉めてから、うちの押し入れの中段に座って襖を細く開けてみた。ちょうどあの絵になった。すぐ閉めて、やめた。

四月八日 晴

焼き増しでなければ出ない、と決めてかかっていたが、今日ので外れた。山本さんの同時プリント、三十六枚撮りで三十七枚上がった。三十六枚撮りは詰め方次第で三十七まで写ることがあるから、はじめは気にも留めなかった。ネガを数えて手が止まった。駒は三十六でちょうど終わっている。三十七枚目の駒が、どこにもない。現像からうちの機械で通した分だもんで、取次のせいにもできん。写っていたのは廊下だ。山本さんとこの、建てたばかりの家の。高さがまた変で、天井の点検口のあたりから見下ろしている。建てて半年、あそこはまだ一度も開けていないそうだ。

四月二十日 晴

うちの去年の運動会のネガを、駒の番号を控えて焼き増しに出してみた。十枚頼んで十枚で上がってきて、拍子抜けした。それが三日続いて、四度目に一枚多かった。写っていたのは店の中だ。レジのこの机。ノートが開いて置いてある。高さは、レジの上の神棚のあたりだと思う。書いているところは写っていない。誰もいない帳場が写っているだけだ。この日誌が写っている。

五月九日 雨

検品はやめにした。数えるだけ数えて、多い分もそのまま袋に入れて渡す。よその家のことだ。見るから覚えられる気がする。一昨年の北原さんには悪いことをした。あの一枚は、いまもレジの下の抽斗にある。

五月十六日 晴

取次の集配が金曜に変わるとの通知。プリント代も上がるそうだ。貼り紙を書くこと。

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1995 年頃 2017 年の秋

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