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F-0032 冗談で隣に停めた自転車に貼られていたもの

時期
2026 年の初夏(聞き取りの実施時期による)
状態
完全
出所
聞き取りに応じた本人。撤去された自転車の持ち主と同じ専門学校に通っていた。

// 本文

(録音から起こされたものとされる。問いの側の発言は――で示す。人名は起こしの際に伏せられている)

――お友だちのことから伺えますか。

同じ学校です。クラスも一緒で。あいつは夜勤のバイトをしてて、夕方にあの駐輪場に停めて、電車で仕事に出て、朝帰ってきて、自転車で家まで帰るんです。逆なんですよね、生活が。みんなが停めてく時間に、あいつだけ出してく。

――駐輪場の話は、いつ頃から。

去年の秋です。最初は自慢でした。あそこ、朝はハンドルとかカゴががっちゃがちゃに絡むくらい詰まるのに、おれのとこだけ楽に出せる、って。ラッキーじゃん、って言ってて、ぼくもそう返しました。

そのうち、メッセージの中身が変わってきて。いや、調子は冗談のままなんです。なんかおれの周りだけ空いてくんだよな、って。写真も来ました。ほんとに、あいつの一台だけ残して、両側がぽっかり空いてるんです。満車の日にですよ。

――列を替えた、という話がありますが。

替えました、一回。端の列から反対の端へ。何日かしたら、また同じ形に空いたそうです。新しい場所のまわりに。そのころにはもう、利用者の人たちの間で、あそこは停めんほうがいい、みたいな言い方が通じてたらしくて。誰が言い出したのかは、あいつも知らないって言ってました。

――隣に停めることになった経緯を。

頼まれたんです。半分冗談で。おまえ、試しに隣に停めてみてくんない、って。ほんとに空くのか見たかったんだと思います。ぼくも、正直、見てみたかった。写真で見えてたから、余計に。一月の、学校が始まってすぐです。ぼくは契約してないんで、ほんとはだめなんですけど、三日だけ隣に停めました。

――三日のあいだ、何かありましたか。

二日は何も。朝停めて、夕方出して、それだけです。三日目は、どうせなら夜も置いとけって言われて、あいつのと並べたまま、電車で帰りました。次の朝行ったら、ぼくの自転車にだけ、シールが貼ってあったんです。黄色いやつ。撤去警告っていう、長期放置だから何日までにどけてください、っていう、あれです。一晩ですよ。放置も何もないじゃないですか。

あいつのには貼ってないんです。ずっと停まってるのはあっちなのに。

――管理会社には確認を。

電話しました。そしたら、うちはその様式の警告は出していません、って。見た目はちゃんとしてるんですよ。ちゃんとしてるっていうか、それっぽい。でも会社のじゃない。じゃあ誰が貼ったんですかって聞いたら、向こうも、分かりかねます、で終わりです。

その日でやめました。三日って言いましたけど、正確には二日と一晩です。

――その後、あの駐輪場には。

行ってないです。あそこの前の道も、たぶん通ってません。意識してるわけじゃないんですけど、気づくと別の道で駅に出てます。

あいつからは、そのあとしばらくして、空きの話が来なくなりました。ふつうの連絡も間があくようになって、夜勤のほうが本業みたいになってる、って聞いたのが最後です。学校では会ってません。メッセージは、既読はつくんですよ。だから元気なんだと思います。

――シールは、どうされましたか。

持ってます。剥がして、封筒に入れて、部屋にあります。捨てればいいんですけど、ゴミに出すのが、なんか嫌で。区の分別だと何ゴミになるのかも、考えたくなくて。すみません、変な話で。

整理票

D-0003 この駐輪場に空きはありません

志木東口第二駐輪場

2025 年 10 月頃 2026-06-15

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